長文にて失礼します!夏の昼下がり、下は1歳から小学生、大学生にシニアと、年齢も立場も様々な18人が、私たちの管理している緑地の一角に集結しました。
今年の1月にこの場所で行った「希少植物バアソブを守るための保全作業」へ参加し、一緒に汗を流した有志の面々です。1月の作業は、照度を改善するために竹を間引き、林床の笹を丹念に刈りとると同時に、バアソブのつるが成長する足掛かりとなる竹や低木を選び抜き、残していくというもの。姿の見えない(冬は地中で眠っている)植物が相手だけに、想像力が求められる地道な作業です。
それでも、子どもたちは竹の運び出しなど、力を合わせて頑張ってくれました。あれから半年以上が経ち、いよいよ開花の季節。冬の作業の成果を確認するべく、みんなでバアソブの花を見に行こうということになったわけです。道々に咲くヒメキンミズヒキやケヤブハギの華奢な花に癒されつつ、林縁の小径を進んでいきます。思いがけず、途中で足元にマムシが現れ、安全な距離まで離れてから全員でじっくりと観察。その後も道中では、トガリシオデとシオデの果実を見比べたり、シュウカイドウの雌雄の花びらの違いや多様性に気付いたり、タヌキの糞場を覗いたり、元気なアマガエルを追いかけたり。。
いつものことながら、なかなか前に進みません。目的を見失いつつも、なんとかバアソブの生育地までたどり着いた一行。「あ、咲いてる咲いてる!」ほどなくして、あちこちから歓喜の声が上がります。子どもたちも、愛らしいバアソブの花を見つける度に、目を輝かせて教えに来てくれるのでした。
“私たちが手入れを頑張ったから花たちも応えてくれたんだ!”それはもしかすると彼女たちにとって、初めて交わす野生植物との対話だったのかもしれませんね。さて、今回の調査では、蕾・花・果実を合わせると、これまでで最も多い開花数をカウントすることができました。花の中にはたくさんのアリがやってきていて、生き物たちもこの時を待ちわびていたようです。
さらには、珍しい品種のミドリバアソブも久しぶりに確認できました。これまでに、手入れの加減などで何度も失敗を繰り返してきているので、今年の成果は上出来といえるでしょう。「また来年の冬も手入れに来ないとだね!」あるパパさんが子どもたちにそう言うと、みんな笑顔で頷きました。そんなやりとりを見て、この場所の手入れを長年続けてこられた団体の方も、優しく笑みを浮かべていました。地域の自然をみんなで守ることの意義、共有する楽しさをこの日もまた実感したのでした。